光蟲
森尾 望美


2025年10月9日(木)〜10月20日(月)
10:00〜20:00

アーティスト・ステートメント
見えない物。見えてはいるけど触れない物。
そんな存在の希薄な物達に興味があります。
それらは、日常のいたる所で目にします。
金属に反射する光、影、くもの巣、虫の羽根、
花が枯れる時に見せる妖艶な色など、
気がつけばよく目にする物達です。
私は、それらの存在に気付いた時に感激します。
私は、その一部を切り取って、
作品として成立させたいのです。
存在があるのか、ないのか、
でも目の前にはちゃんと見えている物を制作したいと、
今は考えています。

展覧会てビュー

森尾望美の個展「光蟲」は、光の存在そのものを素材として扱うような、静謐で繊細なインスタレーションである。
細い金属の軸に支えられた透明な構造体が空間に浮かび、そこに差し込む光が無数の影を生み出す。
その影は壁を伝い、床を這い、空間全体に淡い揺らぎをもたらす。
作品はゆっくりと動き、時間の移ろいとともに姿を変え続ける。

森尾が見つめるのは、「見えているのに触れられないもの」である。
金属に反射する光や、虫の羽根、蜘蛛の糸、花が枯れるときに放つ微かな色——そうした日常の中の一瞬を、彼女は作品としてすくい上げる。
その姿勢には、存在と不在のあいだを漂う“ものの気配”への深いまなざしがある。

森尾望美は、自らの手を介さず、素材の加工や構造の実現を他者に委ねるという制作方法をとる。
その行為は、コントロールを手放し、偶然と他者性を受け入れる態度でもある。
その結果、作品には作家の意図を超えた“生き物のような不確かさ”が宿る。
それは人工物でありながら、どこか自然の律動を感じさせる存在として立ち上がる。

《光蟲》というタイトルが示す通り、そこにあるのは光の虫たちが生息する小宇宙のような空間だ。
光はかすかに脈打ち、影は呼吸する。
観る者は、静寂の中でその変化を感じ取り、目に見えないものの存在を確かに意識する。
森尾望美が探し求める「見えているのに触れられないもの」は、ここで確かに形を得ている。