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2025年9月17日(水)〜9月23日(火)
10:00〜19:00
展覧会レビュー


作家「芋農家」が最初に絵を描いたのは保育園の頃。家の断面図のような構図で、中に暮らす人々を描き込むのが楽しかったといいます。小学生になると漫画を描き始め、『ワンピース』や『FAIRY TAIL』といった冒険漫画に触発され、勇者や魔王といったキャラクターを想像しては紙の上に登場させていきました。高校時代にはこれまで作ったキャラクターが300人を超えていたと語るように、キャラクターを生み出す力が作品の核となっています。
展示空間に並ぶのは、強烈な個性をまとったキャラクターたち。赤や青の鮮やかな髪、軍服やゴシック調の衣装、割れたガラスや白い薔薇を背景にした構図など、それぞれが独自の物語を背負って存在しています。視線を逸らしたり片目を隠したりするポーズには、言葉で語られない秘密や内面を想像させる仕掛けがあり、ただのイラストを超えて「物語の断片」を提示しているかのようです。
デジタルでの制作はまだ数年ですが、色彩のコントラストや画面構成にはすでに確かな個性が表れています。ときに不器用さも見え隠れしますが、その未完成さが逆にキャラクターの熱量を強く伝えてくるのが印象的です。職業にするかどうかにかかわらず、描き続けたいという姿勢が作品全体に宿っており、キャラクター設定とイラスト表現がより結びついていけば、さらに豊かな物語世界が広がっていくでしょう。
芋農家というユーモラスな名前とは裏腹に、その作品群はキャラクター創造への強い情熱と独自の世界観に満ちています。本展覧会は、その始まりと可能性を体感できる場となっています。